洋上風力発電事業に衝撃の入札価格

入札の上限29円、下限なしの入札結果

国(経済産業省・資源エネルギー庁)が主管して行われた入札に、主力電力会社・商社・再生可能エネルギー事業者・海外の洋上風力大手などの企業が参加して行われました。政府は他の電源と競争可能な売電価格を目指して下限価格を設定しない入札方法で行いました。原子力発電の代替えエネルギー・CO2を排出する低価格の石炭などとの価格差を埋めることが出来るか大きな試金石の入札になりました。

結果は予想外の低価格で三菱商事系が「総取り」で洋上風力発電の可能性が見えてきました。赤字覚悟の入札ではないかと疑問の声も上がっています。

三菱商事は洋上風力を先導している欧州で海底送電事業・洋上風力発電事業の実績を10年間積み重ねてきている。日本の実績は少ないが総合商社としての強みを発揮することが大きな力となって実現性を乗り越える。予想だにしなかった低価格の入札に専門家や他の参加事業者にも一定の疑念も残る。

参考 検証記事

検証洋上風力入札① 驚愕の洋上風力入札結果/事業化・産業化の実現性に疑義あり

2022年1月6日 京都大学大学院経済学研究科 特任教授 山家公雄

 

洋上風力発電事業は国家的事業へ

菅内閣で「2050年温室効果ガス排出ゼロ」を宣言しました。2011年の福島原子力発電所爆発事故以来、原発の危険性と高いコストの再検証が繰り返されてきました。1973年のオイルショック以来、電源3法によって推進されてきた原発から温室効果ガス排出ゼロの観点から推進継続してきました。原発50基の停止によって石炭火力発電事業が復活し、高効率火力発電を海外にまで販路を広げていました。COP25(スペインマドリード2019年)化石賞(日本は化石燃料を使う国として批判)の不名誉な賞を頂きました。技術立国日本として屈辱的な国際会議の評価でした。

再生可能エネルギーで最先端を行っていた日本の凋落は厳しいものでした。産業力停滞によって生まれた結果、新興国(台湾・中国・韓国など)への産業移転が続き、日本の産業基盤が空洞化してしまいました。唯一残されている自動車産業が日本の産業を支えている状態です。

三菱商事の入札価格は他の事業者にとって驚愕

菅前首相の官房長官時代からの目玉政策として再生可能エネルギーの洋上風力発電事業の構築を掲げていました。原発に変わる主力電源として再生可能エネルギーへの復刻事業の構築を掲げ、重要なエネルギーとして洋上風力産業に着目し、政府(経済産業省)を主管として検討を加えていました。太陽光パネルは中国、洋上風力は欧州などに先行され、復活が厳しい環境にありました。しかし、日本の産業構築の一つとして「洋上風力」を掲げ、場所の設定~入札に漕ぎつけました。

上限29円の設定はそれ以上であれば検討に値しない売電価格で、消費する産業界、個人世帯の電力料金に大きな影響を及ぼします。今回の入札単価は大きな希望の持てる価格になったと思います。日本は国を挙げて実現に向けた体制ずくりと与論掲載がさらに重要になってきます。場合によっては世界へ挑戦する産業の育成に力を注いでほしいと願っています。自動車産業を補完するような産業の期待抱きます。

再生可能エネルギーの主力 洋上風力発電

風力発電は風で風車を回し、回転エネルギーを電気エネルギーに変える仕組みで、風を受けると風車の羽根(ブレード)が回転します。回転運動を電気に変える風車は、タービンを回す火力・水力・原子力発電と同じ交流の電気を生み出します。

日本では陸上風力発電を主で建設されてきましたが、日本の周囲を取り巻く海上に多くの風を通す箇所があり、原発事故後福島県沖など各地の好立地場所を選定し取り組みを加速していました。

しかし産業としては衰退し、小規模の事業者を残すのみの厳しい状況にあります。再度、官民一体となって産業の構築に全力で歩む時を迎えています。政府は2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比46%減とする目標を掲げています。既に6ケ所の有力候補地を選定しています。