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習主席中国の夢を語って10年 厳しい3期目

秋の党大会開催が迫る習近平3期目の挑戦

共産党一党支配政権のピラミッドを飾る党総書記の座を決める5年に一度の党大会が秋に開かれることが決まり大会日程が10月16日~と発表されました。任期(2期10年)中国統治を遂げた習近平主席は、歴史決議(党規約を改訂方向性を権威付け)の上、69歳で3期目の続投を表明しています。

中国共産党創設100年、中華人民共和国建国70周年を盛大に祝った習近平は過去の歴史決議(毛沢東・鄧小平)に並ぶ権威を習近平が有するとした。特に習近平は改革開放を目標とした鄧小平との路線の違いを強調しながら、創始者の毛沢東路線の回帰?「共同富裕」の言葉で自らを神格化し3期目を歩もうとしています。しかし、国内の混乱、経済の低迷、コロナ対策、一帯一路構想・AIIB投資銀行の状況の悪化、ロシアのウクライナ侵略戦争など、世界情勢も大きく影響して対立する先進国との鬩ぎあいの厳しい対応が求められています。

国内情勢の混乱と停滞 共同富裕を掲げた習近平政権

急成長を遂げた中国社会の歪が徐々に表れてきました。鄧小平が「先富論」先に富める者を先に富ませ、落伍したものを助けることを掲げ、年率10%以上の経済成長を実現し、江沢民、胡錦涛主席を経て成長を続け、2010年世界第2位の経済大国となり中間層が6億人に達しました。しかし、14億人の民を抱える中国は未だ半数の貧困層を抱えています。先進国の経済が低成長の中、習近平政権は+6%の成長を続け米国に対抗する経済大国を維持してきました。1991年日本のバブル崩壊(不動産バブル)、2008年米国発世界的なリーマンショック(金融バブル崩壊)の中で成長過程の中国の積極的な社会投資(公共投資)に助けられました。その後も6%維持について、高速道路網・新幹線網の公共投資、住宅建設投資など積極的に民間投資を続け、近年は地球温暖化対策にも積極的に取り組み、自動車産業の拡大、EV自動車などへの補助金制度を拠出して投資拡大を計ってGDP成長を支えています。特に地方政府が競うように不動産事業者に土地担保融資を続け不動産事業者に住宅マンション建設投資を推進し過剰な拡大路線を続けてきました。しかし、投資を目的とした住宅建設に走り過剰な物件が造られています。習近平政権は3期目を前に成長過程の過度な経済政策を是正するために「共同富裕」を掲げ、抑制策を打ち出してきました。

「改革開放」→「共同富裕」へ変わる中国

1978年~40年以上続けられた改革開放政策によって世界2位の経済大国に成長しました。一方で国内の経済的な格差が広がり成長が鈍化しています。中国指導部は格差是正に向け、秩序だった成長を重視し始めました。今統制社会の中国で何が起こっているのか不透明な部分があります。

共産主義統制を掲げた毛沢東主席は1966年~1976年まで繰り広げた「文化大革命」運動は主席の死をもって終焉し、鄧小平が改革開放を掲げて「先富論」を提唱し今日の中国の成長を牽引してきました。しかし、行き過ぎた成長経済に大きなブレーキが掛かりました。

改革開放の中で積極的な投資と技術移転、人材育成を続けてきた西側諸国は中国の成長と相反する低成長に喘ぎ、経済・国力共に低下して中国への依存度が高まりました。ソビエト連邦との冷戦を終結(1990年)し、一強のアメリカに同時多発テロ(2001年)が起こり、イラク、アフガンへの軍事展開するアメリカの国力低下する中で、改革開放による成長を続ける中国一国が成長を続けました。

すでに始まっている 「 共同富裕」って? 

中国の成長する過程において、「過度な成長」が起こり社会の調和と発展が歪められ収拾がつかない現象が起こってきます。急成長を続ける中国は、国を挙げての成長戦略と地方政府間の過度な競争の中で経済発展が演出されました。年10%以上の成長を描いてきた中国の社会モデルが、習近平政権で国家の数値の分母が大きくなる中、最低限6%の維持を続けてきました。しかし、一帯一路構想、AIIBアジア投資銀行などの中国主導の世界戦略構想は関係国にとって良否が混在し限界も見えてきています。特に新型コロナウイルス対応、協調国ロシアのウクライナへの侵略戦争は世界を分断する厳しい状況が起こり、対中国との関係を見直す状況も生まれています。

国内の「共同富裕 」政策は急速な社会経済発展の中で起こる所得格差の公平性、信頼性を生み出す分配政策として共産党一党政策の信頼性を高めることを目指し、習近平政権は2019年頃から提起、実行に移してきました。主たる政策:①不動産開発の抑制 ②学習支援の縮小 ③IT産業の発展規制と富の分配など、中国経済を牽引してきた重要な事業形態に、これ以上の発展は中国に寄与しないとして規制に乗り出しました。 

コロナ対応の中で不動産バブル崩壊の懸念 

2020年1月20日 習近平主席が緊急会見で中国武漢市で新型コロナウイルスの発生と徹底した都市封鎖・行動規制の抑制策を行ってコロナ拡大を抑えてきました。コロナ発生は成長する中国にとって衝撃的な出来事で、一カ月で欧州に広がり、世界的な感染症の拡大に発展しました。一方で自由主義圏の行動過程で感染が拡がり世界に一気に広がりました。中国国内は武漢の都市封鎖(ロックダウン)の成功自称により、翌年(2021年)の感染者数はゼロに近い結果により制限の緩和が実行され国内経済は一気に改善に向かい中国一国のGDPが一気に回復しましたました。2022年、感染力の強い「オミクロン株」が中国の主要都市上海に広がり2ヶ月近い都市封鎖が行われ2400万人の徹底した行動制限が行われ、経済都市の封鎖は国内・海外に大きな経済活動の停滞を招きました。習近平政権は都市封鎖、人流禁止、徹底した検査、個人の行動制限など徹底した監視社会の中で感染拡大を抑えてきました。習近平政権は中国だけが成功のメカニズムを造り出した。

コロナ禍の中、2021年9月中国から衝撃的なニュースが飛び込んできました。中国最大手の恒大不動産による32兆円規模の債務不履行、デフォルトの懸念がある衝撃的なニュースが飛び込んできました。元をたどれば、共同富裕の理念の中で規制が強化された、融資枠の制限、不動産税の創設案などによって過剰な不動産投資の抑制策が影響しているとありました。その後、恒大不動産だけでなく中国大手・中堅不動産250社に懸念があることが分かってきました。共同富裕政策がクローズアップされ、IT産業大手アリババへの制裁規制、学習塾180万か所の閉鎖指示など「共同富裕」実現に向けて中国の歪を是正する政策の徹底がクローズアップされてきています。