中国の関税措置の報復レアアースの輸出量半減
2025年5月の中国のレアアース磁石輸出量は前月比で約53%減少し、1238トンにとどまりました。これは2020年2月以来の低水準で、前年同月比では74%減という大幅な落ち込みです。
主な要因
輸出規制の強化:中国政府は4月上旬、米国の関税措置への報復として、ジスプロシウムなどを含む7種類のレアアースと一部磁石製品を輸出規制の対象にしました。
税関の慎重対応:規制強化後も、税関当局はレアアース貨物の処理に慎重になっており、承認手続きの遅れが出荷量の減少につながっています。
コードの不備:磁石製品に関する分類コードが1種類しかないため、化学物質の違いを反映できず、処理が複雑化しているという指摘もあります。
この影響で、日本や米国の自動車工場の操業停止など、グローバルな供給網に波紋が広がっています。
代替供給源や日本企業の対応策についても気になります。🍂
トランプ政権レアアース輸出規制に100%関税
2025年10月、トランプ大統領は中国によるレアアース輸出規制への対抗措置として、中国からの輸入品に100%の追加関税を課す方針を表明しました。これは既存の関税に上乗せされる形で、対象品目によっては合計関税率が150%を超える可能性もありました。
その後、マレーシアでの米中閣僚級会談や、韓国・釜山での米中首脳会談を経て、以下のような合意が成立しました:
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中国はレアアース輸出規制の強化を1年間延期
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アメリカは100%の追加関税を回避し、一部関税を10%引き下げる方針を示しました
トランプ大統領はこの合意について「問題はすべて解決した」と述べ、今後の訪中・訪米も視野に入れた前向きな姿勢を見せています。
この一連の動きは、レアアースをめぐる米中の駆け引きが激化していることを示しており、今後も1年ごとの見直しが予定されているため、引き続き注視が必要です。
この関税問題が日本や地域経済にどう影響するか難しい対策が必要です。共に考えましょう!
中国レアアース輸出規制の日本への影響
中国によるレアアース輸出規制の強化は、日本の産業界にも深刻な影響を及ぼしています。とくに自動車や半導体分野では、部品供給の停滞やコスト上昇が懸念されています。
日本への主な影響
自動車産業:レアアース磁石は、EVやハイブリッド車のモーター、サイドミラー、スピーカー、ブレーキセンサーなどに広く使われており、供給不足により一部の工場が操業停止に追い込まれる事態も起こっています。
半導体分野:高性能半導体の製造に必要なレアアース化合物が規制対象となり、製造装置や試験装置の輸入にも影響が出ています。
価格上昇と調達難:中国の精製能力が世界の約90%を占めるため、代替調達先の確保が急務となっており、日本企業は中国以外からの調達を模索中です。
日本の対応と戦略
代替供給源の確保:オーストラリアやカナダなどの鉱山会社との連携強化が進められています。
技術転換の模索:レアアースを使わないモーター技術や磁石材料の開発が加速しています。
政府の支援策:経済産業省は、重要鉱物の安定供給に向けた支援策を検討中との報道もあります。
この問題は、単なる素材の話ではなく、日本の産業競争力やエネルギー政策にも関わる重要なテーマです。
2010年尖閣問題でレアアースの輸出停止
過去、2010年の尖閣諸島沖での漁船衝突事件をきっかけに、中国は日本へのレアアース輸出を事実上停止しました。これは、レアアースを外交的圧力の手段として使った初の大規模な事例として、国際的にも大きな注目を集めました。
事件の経緯と輸出停止の背景
2010年9月7日:尖閣諸島沖で違法操業中の中国漁船が日本の巡視船に衝突。船長が公務執行妨害で逮捕され、日中関係が急速に悪化。
9月20日頃から:中国の複数の税関で、日本向けのレアアース輸出が突然停止。中国政府は公式には認めなかったものの、事実上の禁輸措置と見なされました。
輸出停止の狙い:日本のハイテク産業(特にハイブリッド車や液晶パネル)を狙い撃ちし、外交的譲歩を引き出すためとされています。
その後の影響と教訓
レアアース価格の急騰:世界市場で価格が10倍近くに跳ね上がり、各国が中国依存のリスクを痛感。
日本の対応:この危機を契機に、日本は供給源の多様化、代替技術の開発、リサイクル強化などを進め、中国依存度を約90%から60%以下に削減しました。
国際的な反発:WTO(世界貿易機関)への提訴も行われ、2015年に中国は輸出枠制度を撤廃しました。
この2010年の出来事は、現在のレアアースをめぐる地政学的な駆け引きの原点とも言える重要な転機でした。もし、そこからの日本の戦略や、今後の備えについても掘り下げてみる重要な機会です。
米中トップ会談でレアアースの規制を1年延期
中国の独占的レアアースは世界の脅威
米中の閣僚級会議と米中首脳会談でレアアースの輸出規制は一年延期されました。しかし、輸入価格など独占的な中国の対応に「良かった」と言える状況にありません。
中国のレアアース支配は、単なる資源の話ではなく、地政学的なリスクそのものです。米中首脳会談で輸出規制が1年延期されたとはいえ、価格や供給の不安定さは依然として世界経済の脅威となっています。
アメリカの動き
米国はウクライナとの交渉で、軍事支援の見返りとしてレアアース資源の採掘権を求めています。
グリーンランドやアラスカなどでも探査が進められていますが、採算性や精錬技術の面で中国に劣るという課題があります。
日本の希望:南鳥島の海底資源
2010年の日本の教訓
尖閣問題で突然レアアース輸出が止まったあの衝撃は、今も日本の産業界に深く刻まれています。あの時、日本は回収・リサイクル技術を強化し、依存度を40%削減しました。それでも、中国の精錬技術と価格競争力は依然として圧倒的です。
このような状況下で、南鳥島の資源は「日本の未来を拓く鍵」とも言える存在です。東京大学の研究チームは、南鳥島沖の水深6000mの海底泥に、世界最高品位のレアアースが大量に存在することを確認しています。この泥には、中国の陸上鉱山の20倍の濃度を持つレアアースが含まれており、世界需要の数百年分に相当する埋蔵量があるとされています。
開発の進捗
2026年に試掘開始、2027年に本格的な採掘試験、2028年以降に商業化を目指す計画が進行中です。
環境負荷が少なく、放射性物質もほとんど含まない「クリーン資源」として注目されています。
東京大学や内閣府、企業連携による産官学の国家プロジェクトとして推進されています。
日本の排他的経済水域 日本最東端の南鳥島(東京から2000)㎞の海域に良質の100年規模のレアアースが確認されています。既に水域外に中国が探査活動を開始しています。
